きゃりーぱみゅぱみゅの歌詞について

下のまぶたが腫れて涙袋きゃりーぱみゅぱみゅみたいになってしまった。

きゃりーぱみゅぱみゅの楽曲は、真剣に歌詞に耳を傾けるたぐいのものではない。「きゃりーぱみゅぱみゅの歌詞」を誰かがわざわざ語ろうとするとき、聞き手の頭にまず浮かぶのはきっと「PONPONPON」の最初の部分だろう。

もしもあの街のどこかで チャンスがつかみたいのなら

映画『ピンポン』を思い出す。終盤、卓球部に属する主人公の試合を、かつての強敵が見に来るシーンだ。すでに卓球を辞めた彼は少しチンピラみたいになっており、傍らには女を連れている。会場である体育館に向かうため、校庭を横切る。当然、女は卓球に興味がない。男の足を止めたくて、彼女はこう言うのだ。

「ねー、水泳がやってるう」

私はあの映画の中でこの場面が一番好きだ。でもこんな話を書きたいんじゃないんだよ、本当は。

さて。「PONPONPON」の時に気配を感じ、「つけまつける」で確信に至ったが、きゃりーぱみゅぱみゅの歌詞はなんだか「自己啓発っぽい」。それが気になって仕方がない。

同じ空がどう見えるかは
心の角度次第だから

これは「つけまつける」の歌詞で、曲中に3回使われるフレーズ。つけまつげをつけて、自分に自信をつけましょう、というようなことをずっと歌っているわけである。

「コンプレックスの克服」は、若い女性に受けると思われているのか、女性誌などでよく語られるテーマである。その上、肌感覚でしかわからないものの、最近の流行でもある気がする。銀座四丁目の大画面をぼんやり見ていたら、きれいなモデルたちが料理を習ったり英会話に精を出す画が続き、最後に、「がんばるってカッコいい!」。ユーキャンかと思ったらキャンキャンのCMだった。

「PONPONPON」はより単純だ。「チャンスがつかみたいのならただ前に進むしかない」。浪人生にかけたい言葉である。

たぶんきゃりーぱみゅぱみゅの歌詞はそこまで練られているものではない。しかし、それでも自己啓発系のワードが選ばれていることはたしかだ。明らかにメインカルチャーではない出自の彼女も、こんなことを歌うのか、と思う。他人の評価にぶら下がらずに、自分が「かわいい」と思うものを身に付け、本当にいきいきと生きている彼女が歌う言葉が「努力」というのは、どうも古典的すぎやしないかい。

「がんばればなんでも手に入る」というのは「がんばらなければなにも手に入らない」と表裏一体の概念で、万能のものではない。いまだにどの国にも政府があり、富める者から貧しい者へ財を分配しているゆえんである。とにかく私はこういう価値観に触れると息が苦しくなってしまう。弱い人間なのである。

でもきゃりーぱみゅぱみゅは好き。

参考動画は以下のとおりです。