街コンという名の競技(の観戦記)

もう市民権を得た感のある「街コン」。「街」と「合コン」をかけあわせた造語であり(まあ合コンも造語だが)、ひとつの街を舞台に数百人規模でする合コンのことをいいます。晩婚化・少子高齢化への対策と地域活性化を一挙にやっちゃおう!という崇高な目的のもと、参加者は同性ペアで町内の飲食店をめぐりながら異性と交流するわけです。参加費は、食べ飲み放題で男性6000円、女性4000円が相場といった感じ。

で、先日、その運営ボランティアをしてみました。

朝っぱらから1000人の来場者を受付に並ばせ、昼休憩は30分、街歩きタイムでは3時間ほど店の前に立ちっぱなしで店内の男女比を確認しつつ「空席/満席」の札を掲げ、空いている店舗を把握して参加者をそちらに誘導します。お日さまの沈むころにようやく任務終了、というなかなかの重労働で、謝礼は交通費の1000円。たくさんの人から「よくそんなことやるね」と言われました。

私は大義名分のために滅私奉公するような人間ではありませんし、そもそも怠け者です。地域が衰弱するのも子供が減るのも問題だとは思いますが、それを解決するために休日を潰し汗をかくようなことはあまり好みません。それでも、このボランティアについては、現在、月に1度くらいできたらいいなと考えています。つまりただただこのボランティアが楽しかったのです。

そういうわけで、楽しくて仕方なかった街コンボランティア体験を振り返りつつ、街コン行ってみたいな〜と思っている皆様に向けてちょっとした助言を書いてみようと思います。

あ、ちなみに私がこの街コンに客として参加しなかった理由は二つあり、まず特に出会いを求めているわけではなく、次に一緒に行く友達がいないからです。

さて、さっそく助言などを。

まず、街コンは大勢が参加してばらばら移動するので通常の飲み会形式の合コンより選択肢が多く気楽ではありますが、それなりのシビアさがあります。

第一に、店の移動をする際にあぶれる危険性が高すぎる。私がボランティアに行った街コンは、参加者と座席の数が同じだったようです。すると、まあ奇跡でも起きない限り、どこかの店・エリアに人が集中してしまい、難民が現れるんですね。けっこう大量に。地域活性化どころか地域住民の迷惑になります。しかも、空いている店を見つけても男女比が1:1じゃないとつまらない。「女子会みたい」な店舗ができた、と何度か耳にしました。そのうえ、運良く店に入れても、好みじゃない二人組が目の前に座ることになったら……。

切れるカードが多すぎる。しかも全てにリスクが付きまとう。

たとえばこんな状況。現在あなたはそこそこ好みの相手と20分間ほど談笑している。でも個人的に仲良くなりたいかというと、どちらでもない。趣味も微妙に合わなさそう。でも、いまいる店のなかではやっぱりそこそこ好みのほうなんだよなあ……。

とりあえず連絡先だけ交換して、もう違う店に行くのもあり。運命の出会いが待ってるかもしれない。しかし、もうこれ以上の相手に恵まれないことを想定しなければいけない。いや、それどころか座って飲める店には二度と入れない可能性すらある。

いや、もうずっと店にとどまる。事態の悪化は避けられるから。発展しない会話を延々続け、同じ店にいて、この相手と恋が芽生える予感もなく、それで数千円。

古典派経済学を批判してケインズはこういいました。「我々は、長期的には皆死ぬ」。男女の需給バランスは、きっと時間が解決してくれる。そうして地球上で人類はすくすく育ってきた。でも、この街で、たった3時間じゃ、短すぎるんだよね。もうこんなの地域活性化でも出会いのイベントでもないよ。れっきとした競技だよ。

ここで私が勧めたいのが、街コンに来た目的をはっきりさせること。

「楽しそうだから来てみちゃった〜。人間観察もしてみたいし〜。異性とも出会えてあわよくば恋愛もできちゃったらいいな〜」みたいなテイで参加したら、よほど容姿に恵まれた方でない限り、なんの実りも得られません。人間観察はできるかもしれませんが、それ以上にリスクが高すぎます(店がどっこも混んでる瞬間、やっと入った立ち飲みの店で右往左往する瞬間、好みの人が別の人と楽しそうにおしゃべりするのを横目に眺める瞬間、やっと話しかけた人に早々、あぁこいつだめだな、って判断される瞬間、そっちのほうが確実に多いです)。わけのわからない言い訳は禁止です。あなたは出会いたい!異性と出会いたい!だからわざわざ街コンなんか来てるんでしょ?その欲望から目をそらさないでください。

それで、ゴールをどこにするかが問題です。

連絡先の交換、論外。そんなん最初にやれ。みんな恋人ほしくて参加してるんだからどんどんいけ。街コンのいいところはしがらみのないところであるわけで、何十分かだらだら話してやっと連絡先交換して解散とか、ばかばかしいと思う。こんなんゴールじゃない、スタートだ。

となると、やっぱりせめて恋の予感くらいはゲットしたいわけで。

このような形態の出会いイベントは、第一印象がかなり重要になります。なかなか空かないお店で、しばらく「女性一組ならご入店できます」という状態が続いたことがありました。四人席がいくつか設置されているそのお店の中に、一卓だけ、男性二人がぽつりと座るテーブルがありました。…その先は言う必要ないですよね。

顔はもう変えようがないと思うんです。でも、服装とか、雰囲気とか、清潔感はどうにでもなります。男女ともに自分なりのオシャレとか考えないでください。h.NAOTOもヒスもA-net系列もギャルソンもハットも英字(英文?)プリントTシャツもちょっと和風のお洋服も全部全部禁止です。GAPやコムサのマネキンみたいな格好がベストだよ。こういう場で可能性を広げるためには、まず「一目で嫌われない」ことが肝要なんじゃないかと、見ていて思いました。嫌われなければ、とりあえずおしゃべりできるから。個性を出すのはそこからでいいんじゃないだろうか。あ、まあ、すっごく似合う格好があるなら全然そちらを着たほうがいいと思うんですけど。

次に、ペアの友人との取り決めは必ず行なってください。こういう時にどう動くか、というのは、当日朝から念入りに打ち合わせをしておくべきでしょう。友人がもし「そんなにがっついてないし」みたいにオシャレ気取ってたらぶん殴ってさしあげていただいて構いません。そんなん友人でもなんでもなく、足手まといです。紳士協定を結んでおきましょう。

もちろん舞台となる街について熟知していなければいけません。一度くらい下見をして、地理をわかっておいたほうが良いでしょう。けっこう迷います。そんで、男性は、二次会用の店を絶対に、絶対に調べてリストアップしておくことを勧めます。チケット制(※行ける飲食店の数が決められている制度)はいいもん食べられるときもあるみたいですが、基本的にあまりお料理はよろしくないので。だいたい街コンの開催時間は15〜18時頃ですし、メニューも「枝豆、フライドポテト、サラダ、エキストラ(イタリアンのお店ならイタリアっぽいつまみとか)って感じです。だから、ターゲットが定まり次第「行ってみたい店あるんだよね。これから行こうよ」と、もう街コンから降りてオシャレな店に行くのがいいと思うんです。

ちなみにゴールをワンナイトラブにするんだったら、当然そのようなことのできる施設がどこにあるか、確認しておくべきです。ない街とかありますからね。そうしたらがんばってうちで飲み直そ?って言うしかありませんね。がんばれ。

連絡先はたくさんあるに越したことはないでしょう。ちょっとひまになったら電話しちゃえばいいわけですからね。

さて、お店にあぶれた場合の過ごし方。ナンパはかなりよい手だと考えます。参加者はリストバンドだかバッヂだかをつけさせられるので、ひと目でわかります。いいか、それをつけている者はみんな恋がしたいんだぞ。話しかけられて悪い気は、まあそんなにしません。しかも同性ペアで行動しているので、気楽ですし。少し外れた場所にある店が空きやすいようなので、あぶれた者同士で空いたところまでぶらぶら散歩するのもまた一興ではないでしょうか。

というのが、街コンを楽しむために必要なことなんじゃないかと思われることです。やっぱりがんがんいくのがいいんじゃないですかね。とはいえ、一度やってみないとなかなかノリがつかめないかと思います。一度目はまあうまくいかないと思っておいたほうがラク。二度目の街コンからが勝負です。

トーク術など相手をその気にさせる方法については、あえて書かなかっただけで、決して私がクソコミュ障でリア充っぽいお方とほとんどおしゃべりできないからわからないなんてことはありえません。

そんなクソコミュ障のわたくしですが、店の前でスタッフ業務をしていただけで電話番号をいくつかゲットしました。コミュ障なだけでなく、胸囲が平均以上にあるという以外取り立てて外見的な長所のない(というか短所だらけの)私がこのような僥倖にあずかれたのも、スタッフはスタッフだというだけでモテるからです。男性スタッフも普通に女性参加者から連絡先をもらっていました。街コンの参加者たちは、やっぱり下心が透けて見えるんです。しかも人を値踏みしてるんです。微妙に心が折れたところに、親切にしてくれる上、まったくがっついておらず、しかもボランティアをするほど人格がよい(ように見える)人間がいたら、まあそりゃあちょっと仲良くなりたくなりますよね。一度目の街コンで傷つきたくない方は、まずスタッフをしてみるのもおすすめですよ。っていうか参加者でもなんでもない通りすがりの人とかからもナンパされましたからね。話しかけやすいんでしょうね。

個人的な話になりますが、私は文化系男子(オシャレな服を着て色白で背が高くマイナーな音楽や映画を好む者)に対して、かなりアンビバレントな感情を抱いています。まあつまり、たぶん私はそういう人たちが好きなんだけど、「いかにも」な感じがしてはっきり好きだと言えない。言えない理由は、彼らが私なんかよりおしゃれな趣味をしていて女子っぽい女子が好きだから、つまり彼らが一生私のことを好きになってくれないから。だと思っていたんです。

でもね。

「街歩いててもナンパとかしてこないだろ」と思われる文化系男子から番号もらって、お姉さんはうれしかったです。イベントスタッフ効果なのは重々承知していますが、こじらせた自意識の糸が、少しだけほぐれた日になりました。

あ、ボランティアが楽しかったのは、モテたからではありません。たぎった男女1000人を一日中、お金もらって眺めていられるなんて、なんのご褒美なのよ、って私は思うんです。はい性格悪いですね。すいません。ちなみにノリのいい参加者(※男性に限る!)にこう言うと超笑ってくれます。

そうそう。街コンで生まれるものを「やっすい恋」と表現するような言説にいくつか出会いました。恋にランク付けしているようじゃ、一生お前らの好きな「本当の恋」なんか生まれないんだからな!!

長くなりましたが以上です。