街コン参戦記

すでに多くの人が存在を知るところとなった「街コン」へ行ってまいりました。以前にスタッフとして遠巻きに眺めたことはあるこの催しですが、今回は客として参加しました。

よくあるタイプの街コンは、休日の夕方ごろに集合して、いわゆるハッピーアワー(飲食店がすく時間帯ですね)にいくつかの店を舞台にして行われるわけですが、今回行ったものは平日夜に執り行われる小規模なものでした。おそらく運営の折衝がうまくいかなかったのであろう、お店も2店舗だけでした。

街コンというのは同性複数名で参加しなければいけないものが大半で、例に漏れず私も友人と二人連れ。どちらも特に恋人を作ろうといったような気概はなかったので(先に断っておきますが私にはお付き合いしている人がいます)、知らない人とたくさん話してコミュニケーション能力を磨くことが目標だと思っていましたし、実際にそういう感じになりました。適当に話して適当に別れてまた別の人と話す。琵琶法師もびっくりの諸行無常。これが本当の一期一会。

計6組ほどの男性とお話ししました。一軒目は立ち飲みで二軒目は着席だったのですが、グラス片手に虚空を見つめていれば必ず10秒以内に男性に声をかけられます。そして黙っていてもいろいろ質問をしてくれたりあだ名をつけてくれたり似ている芸能人を探し出してくれたり、ともかくこちらが気を使わなくともそこそこ楽しい雰囲気に浸れる。大学を出て以来「出会いや恋を求めており、かつその相手の間口をまず広く取っている男性複数名に会う」という機会が皆無であったため、世間では女というだけでここまで優遇されるのか…!と感動してしまいました、というだけならいいのですが、ここが私の悪いところでちょっと優越感を抱いてしまいました。この世界の中では完全に女性優位。この数行のあいだに「優」という字を三度使いましたが、よく見るとこの字、中に「女」が入っていますね。嘘ですけど。ともかく女というだけでこんなにちやほやされるのかと、普段まったくちやほやされない私は思いました。はっきりいってやみつきになる女性が現れても何らおかしくないです。本当に気持ちよかった。

いま思い出したので付け加えますと、私は結構よく、会話の輪から外れてしまうことがあります。たまにクラブなどに出かけてもよく独りになります。一度外国人グループを交えて飲み会をしたときも、例に漏れず会話から取り残されてぽつんと座ることになり、初対面のウズベキスタン人に「あんまり人と話したくないんでしょ?ぜんぜん楽しそうじゃないね?」と私の人付き合いのしかたを批判されました。そういうわけで立ち飲みの場は死ぬほど苦手なのですが、苦手だと思う間もなく話しかけられました。私は特に容姿に優れているわけではないので、これは街コンという場の力によるものが大きいと思います。

ただ、ここでの出会いが大恋愛につながるかというと、首を傾げざるを得ません。あまりに出会いが皮相的すぎて、互いが互いのことを顔のない「男」と「女」、ちょっとよくて「男(ノリがいい)」、「女(顔が好み)」くらいとしか認識できず、よほど意気投合するか、どちらかが猛アタックするかしない限り、ほぼ進展はないかと思われるからです。もっとも、誰でもいいから誰かに出会いたくて街コンなんかに来るわけであって、仕方ないことではあるのですが。しかし次のアクション(お開きになったあとにメールを送るなど)はなかなか勇気のいる作業なんじゃないかと思います。しつこいようですが、お互い、誰でもよかったわけですから。

私と友人は、適当なおしゃべりを相当に楽しんだのですが、結局2時間で場を後にしました。何度も言いますが運営がクソだったせいで2会場しかないのが災いし、なんとなく「よさそう」な人がいないのはすぐわかりましたし、何より疲れていた。友人が「明日は7時半に出勤なんですよ〜」という大人の嘘をつき、マクドナルドに避難して2時間おしゃべりしてから家路につきました。「楽しかったからまた行こうぜ」と誓いながら。

さて、この街コンでもっとも衝撃を受けたのは「年下」の存在でした。まともにおしゃべりした男性のうち、じつに2名が年下。私は23歳なので、対象年齢20歳以上の街コンであればもちろん私より若い男の子が参加する可能性も大いにあるわけですが、しかしこれまで一切気にしたことない層の人たちが、自分の中の恋愛市場に組み込まれつつあることを感じざるを得なかった。とはいえ進んで年下の男の子(feat.汚いハンカチ)と懇意にしようとは思わなかったのですが…。個人的な印象に過ぎませんが、人混みの中をうまくエスコートしてくれようとしたり、大きな声で店員さんに私の注文を伝えてくれたり、「頼りになる俺」をあからさまにアピールしようとする人が多い気がする。私が直接に会った人に限らず。

あと、「絶対にサブカルチャーの話はするまい」(というか東京随一の繁華街で行われた街コンだからサブカルクソ野郎なんていないだろう)と思って行ったのに、3秒くらいぼんやりしていたらサブカルクソ野郎に話しかけられて「光るものを感じるんだけど音楽好きでしょ?」と言われて「ビートルズが好きです」と答えたにも関わらず気づけば私はweezerあたりのことを喜々として話す相手にきちんと合いの手を入れていたのであった。それにしてもこういう音楽の話(そして付随する周囲への優越感)ってあんまりおもしろくないというか、他で交わされている「街コンはじめてなの?」「どんな仕事してるの?」と、皮相的であるという面においては一切変わらない気がしました。誰々の何々という曲がいい、って言い合うだけだし。それより外見で趣味を見破られたことがショックで、あとは同行の友人(営業職)の格好(オフィスカジュアル)がかわいかったから、私もOLみたいな服を買おうと思いました。普段はGAPとユニクロしか着ないから…(大学生のときはA-Net系列の服ばかり着ていたが、あるとき解脱した)。

もうひとつ反省点として挙げられるのは、好みのタイプを聞かれて「喧嘩に強い人」と答えてしまったことで、おそらく正解は「一緒にいて楽しい人かな」などと言うべきだった。正確に言えば「一緒に歩いているときに暴漢に襲われたとして、私を守るために相手に立ち向かう姿が気持ち悪くなさそうな人」なのだが、こんなの我ながら十分条件でもなんでもないし、しかも「たとえば誰?」という質問に「佐藤健…」と返答してしまった。佐藤健は顔が好みなだけです。こういうところで正直になる必要はないよな。あともうひとつ、「街コン初めて?」と聞かれたら、たとえ毎週出かけていようと、「うん。初めて」と答えなきゃいけないなと思いました。明らかにモテなさそうで話もつまらない、しかも「俺らそんなにやる気ありませんから」みたいな態度の男性二人組が「4回目です」と言っていて、なんだか気持ち悪く感じてしまったので…。

そうそう、かなりおもしろかったこととしては、「双子のうちのひとり」「三つ子のうちのひとり」という人たちに会ったのですが、それぞれ名前に「健康に丈夫に育ちますように」という願いが込められまくっていて(健太郎とか丈とかそういう感じ)、多胎出産の大変さを感じさせられました。

あとはほとんど女子参加者同士の交流がなかったのも印象的だった。当たり前だけど。しかし不自然な光景ではあります。

ちなみに打率(連絡先を交換したあとに次回に繋がるようなメールが来た率)は十割でした。が、ひとりはパーティーのお誘いメールで、たしかにこういう場所で連絡先を大量入手するのは賢いのかもしれないなと思いました。それにしてもその場ではめちゃくちゃフレンドリーに話したのに、その後の誘いを無視するのは普通に申し訳なくなりました(誰にもメールを返さなかったのだけれど、全員2通目を送ってくれたので…)。恋愛に満足している状況で街コンに行くのはやはり悪かもしれない。

しかし、山手線の内側に引っ越してからというもの、2kmの円の中でほぼ生活が完結してしまっていた(家と会社とスーパーと図書館)ことを悔やんだのも事実です。世の中にはこんなに、恋の芽(種くらいか)があるものなのか。

というわけで、初めて参加してみた街コンですが、やはり皆様におすすめしたいイベントであることには変わりありません。ぜひ来週末にでも参戦してみてくださいね。